静かな退職(Quiet Quitting)という言葉をご存知でしょうか? 表向きは退職せずに会社に留まりながら、実際には最低限の業務をこなし、仕事への熱意を失ってしまう状態です。
コロナ禍以降、この働き方が注目されるようになりました。多くの人々がこれまでの働き方を見直し、静かにキャリアから一歩引いてしまう傾向が広がっています。
この記事では、静かな退職の背景や原因、そして企業がどのように対応すべきかを具体的に探っていきます。弊社、グローバルビジネスソリューション株式会社での取り組みの実例も紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
静かな退職とは?
静かな退職とは「最低限の業務をこなし、仕事へのやりがいを求めない」という消極的な働き方を表す言葉です。「退職」という単語が含まれていますが、当事者は企業に所属している状態です。
静かな退職状態になった人は、仕事への熱意や会社への帰属意識が低下します。このような人材が増えると、「組織の生産性低下」や「社内の人間関係の悪化」といった問題に繋がります。
静かな退職は、英語ではQuiet Quittingと呼ばれています。この言葉が広まったきっかけはSNSでした。コロナ過に起因する大量解雇(レイオフ)によって、これまでの働き方を見直す人が増えたと言われています。
日本においても、管理職を目指さない人が増えていることが問題視されています。キャリアアップを目指さない働き方は、特にZ世代の価値観として注目されがちですが、実は幅広い世代に広がっています。静かな退職の実践として、最低限の仕事しかやらない人が増えているのです。
静かな退職の原因
静かな退職にはいくつかの原因があると言われています。労働に関する制度の変化といった環境的要因や、価値観の変化といった個人的要因などです。
働き方の多様化
働き方の多様化は静かな退職の原因のひとつと言われています。日本では「働き方改革」が謳われて以降、労働環境の見直しが推進されてきました。従業員の働き方の多様化が受容されるようになり、副業やパラレルワークという働き方が広く認められるようになっています。
企業側も副業に関する就業規則を緩和するなど、従業員のワークライフバランスを尊重する傾向にあります。
これらの施策自体は、多くの場面で好意的に受け取られている反面、静かな退職の原因のひとつと考えられています。
業務よりもプライベートな時間の充実を優先する考えを持つ人が増えた結果、自社のために働くことへのやりがいを求める人や、責任ある役職を目指す人が減っているからです。
曖昧な人事評価制度
曖昧な人事評価制度は静かな退職の原因のひとつにと言われています。多くの企業において、人事評価制度にはさまざまな課題があります。よくある例として、以下のような点が挙げられます。
- 評価基準が明確ではない
- 評価者によって差が生じている
- 評価に見合った待遇が得られない
- リモートワークに対応できていない
人事評価制度への不満は、自社へ貢献する意欲の低下を引き起こします。「頑張っても評価されない」と感じた従業員は、静かな退職の状態へ移行してしまう可能性があります。
静かな退職のデメリット
静かな退職にはさまざまなデメリットがあります。
業務のパフォーマンスが低下する
静かな退職のもっともわかりやすいデメリットは、業務のパフォーマンスが低下することです。特に以前は意欲的に働いていた人ほど、変化が大きく表れます。
新しいチャレンジや改善提案が減る
働く意欲が薄れると、新しいチャレンジや改善提案が減っていきます。新規サービス開発やサービス改善といった業務には、創造性が求められますが、静かな退職状態になると、なかなか力を発揮できません。
職場の人間関係が悪化する
静かな退職は職場の人間関係にも悪影響を及ぼします。同じ業務に携わっている人同士の間で、仕事へのモチベーションに差があると、不満がたまりやすくなるからです。特に意欲的に働いている人にとってのストレスとなる恐れがあります。
場合によっては、意欲的に働いてくれている人材が、転職したり、静かな退職状態に変化することも起こり得ます。
静かな退職への対策
静かな退職の兆候を早期にキャッチする
静かな退職はいくつかの兆候があります。
- 社内行事への不参加
- 会議での発言を控える
- 会話の減少
- 業務に対して消極的になる
- 仕事の成果の質が下がる
これらは「離職に向けた準備」や、「メンタル不調の兆候」の可能性がありますが、静かな退職に向かっている場合もあります。なにか最近様子がおかしいなと周囲の人が気付いたときは、当事者からのヒアリングができるとよいでしょう。
評価制度や業務の責任範囲を明確にする
静かな退職を防ぐには、従業員に対して、業務を通じて成長する機会を明示することが有効です。評価制度や業務の責任範囲など見直し、基準を明確にすると良いでしょう。
明確な評価制度や責任範囲は、従業員ひとりひとりの適切な目標設定の基準になります。ひとりひとりが目標を持ち、意欲的に業務に取り組んでもらう土台となるため、人事評価制度は重要です。
ワークライフバランスの支援
従業員ひとりひとりのワークライフバランスを支援することも大切です。先述したようにコロナ過を期に仕事への価値観が変化した人もめずらしくありません。仕事以外の活動に力を入れたいと考える人も増える中、業務とプライベートの両方を支援できるように、ワークライフバランス支援制度を整えていく必要性が問われています。
静かな退職対策の実践例
ここからは私たちグローバルビジネスソリューション株式会社が取り組んでいる、静かな退職対策の実例を紹介いたします。
エンゲージメントの向上
弊社では社員満足度調査ツールを利用して、全社員のエンゲージメントを集計しています。調査は月次で実施するものと、半年に1回実施するものの2種類があります。こういった調査ツールを活用して、従業員の変化を早期にキャッチし、意見を取り入れるきっかけを作るようにしています。
キャリアプランとロードマップの提示
弊社では従業員ひとりひとりのキャリアプランを直属の上司と相談して決める制度があります。従業員ひとりひとりが目標を以って中長期的に業務に取り組むことを促進し、モチベーションを保って働けるようにしています。
目標決定の際には、当事者任せにせず、目指すキャリアの知識や経験を持った先輩社員が適切なフォローを提供することが重要です。
フィードバックの機会を定期的に設ける
弊社では、普段の業務や中長期的な目標設定に対して、定期的なフィードバックの機会を設けています。全ての従業員が月報を提出し、直属の上長がフィードバックしています。また、定期的に1on1ミーティングを実施しており、従業員の声を聴くようにしています。
おわりに
いかがだったでしょうか。この記事では静かな退職について解説し、その対策について実例を交えて紹介しました。
人材流動の激しい昨今、静かな退職という働き方が広まっているという点には、注意が必要です。
人事担当者は、時代に合わせた人材マネジメントができるように、各部門の役職者とも連携して制度やコミュニケーションの見直しが必要となるでしょう。
グローバルビジネスソリューション株式会社では、人事・採用業務でお困りの方に向けた無料相談を承っております。お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。